啓明舎(けいめいしゃ)|難関中学受験名門/ストレスこそが成長の糧

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ストレスこそが成長の糧

3年の1月までは、週1日算数・国語だけの授業だが、2月からは「新4年生」として週3日・4教科の学習が始まり、4月からは月例テストの結果でクラス替えも行われるようになる。塾によって通塾日数などは様々だろうが、4年生から本格的な受験勉強がスタートするという点では、ほぼ変わりはない。

 

4月。最初のクラス替え。はじめての経験に、クラス分けの掲示の前で、自分の所属クラスに一喜一憂するのはもちろんのこと、同じ小学校の友だちの名前を探しては、「やった~、同じクラスだ」「すご~い、A子ちゃん、1組だ!」と大騒ぎが始まった。

嬉しいのも悔しいのもよくわかる。でも、中学入試まであと3年弱。その間にはまだ何十回となく組分けテストがあるのだから、浮かれたり落ち込んだりするのはまだ早過ぎる。そこで大きな会場を借り、生徒全員を集めて、こんな話をした。

「君たちには、医者になりたいとか、JAXAで働きたいとか、いろんな夢があるだろう。自分の将来の夢を叶えるため、そして将来社会に役立てるような人間になるためには、まずしっかり勉強し、学力を身につける必要がある。確かに、どの中学に合格し、どの大学を卒業したかで、将来の進路は変わってくる場合がある。例えば会社に就職するときには、『履歴書』というものを提出することになる。でも、その履歴書に、『4年生のときは塾で何番目のクラスにいたか』を書くのか? 一度や二度、テストの結果が悪かったからといって、それで自分の将来の夢を諦めてしまうのか? もし失敗したら、反省すべき点は反省して、でも終わったことはすぐに忘れて、『よ~し、次こそは頑張るぞ!』という気持ちになれるかどうかが大切なんじゃないのか?」

子供たちは真剣な顔をして、大きく頷いてくれた。

 

でも、やっぱりテストの結果は気になる。塾の勉強より他に、やりたいこともたくさんある。

そして5月。2回目のテスト。保護者会のアンケートには

「何度も声をかけないと、宿題をやろうとしません。」

「塾には楽しく通っているのですが、漢字の書き取りとかテストの直しとかをやりたがりません」

という声が約半数(男の子の比率が高い)。

 他方で 

「できない問題があると、イライラして反抗的な態度をとります」

「1問でも解けない問題があると、泣きだします」

「宿題が終わらないといって、暴れることがあります。でも手を出そうとすると、『教えてもらったらダメなの。自分で考えなきゃいけないんだ』といって、言うことを聞きません」

という解答も多数(こちらは圧倒的に女の子が多い)。

 

まだ4年生とはいえ、学習内容は、中学受験を経験していない者には想像もつかないほど高度であり、わからない問題があるのも当然のことだ。他方で、学校の教科書は呆れるほどやさしくなり、しかも通知表は「観点別絶対評価」だから、ある程度家庭学習の習慣ができており、授業をちゃんと聞くことができる子供たちならば「できない」「通知表が悪かった」などという経験は皆無に等しい。

だから、余計に「わからない問題がある」ということが我慢できない。クラスが下がると、まるで世界が崩壊してしまうかのような衝撃をうける。

「塾の宿題がわからないとか、テストの成績が悪いとかで、こんなに泣いたりイライラしたりして、この子の成長が間違った方向に向くのではないかと心配しています」

「できない問題がある」「宿題が終わらない」といって気持ちが不安定になる子がいると、さぞかし「お受験ママ」がプレッシャーをかけているのだろうと思うかも知れないが、4年生くらいの段階ではむしろ逆のケースの方が多い。「そんなに焦らなくていいのよ」「まだ先は長いんだし、テストの成績や受験の結果だけが人生じゃないんだから」・・・両親ともに「理解のある」場合のほうが、「頑張って」しまうことが多い。子育てというのは、本当に難しいものだ。

 

確かに、塾通いや受験勉強が、子供たちに負荷(ストレス)がかけることは否定しない。でも、それは受験勉強に限らず、スポーツでも音楽でも同じことだ。ひとつ上の段階へとステップを踏むごとに、誰もが壁に突き当たり、その壁を超えられないことに悩み苦しむ。その壁を一つひとつ超えていくことによって、子供たちは成長していく。

「テストの成績が悪いと、お父さんに怒られる」というプレッシャーではなく、「できない問題があることが悔しい」というストレスに悩んでいるのであれば、それこそが我が子にとっての大きな成長のきっかけであると思って、「すごいね~。こんなに難しい問題に挑戦しているんだね」「できないと、悔しいよね。でもそういうことって、勉強だけじゃなくて、お父さんやお母さんのお仕事でも、たくさんあるんだよ」と、暖かく声をかけてあげてほしい。

成長には必ず「産みの苦しみ」が伴う。ストレスも悩みもなく、すくすくと成長していくなんてありえない。成績が上がったときや、志望校に合格したときではなく、新たな壁が行く手を塞ぎ、悩み苦しんでいるときこそが、「最強の応援団」である親の出番だ。そうした苦しみこそが、我が子にとっては大きく成長するチャンス、そして親たちとっては、やがてかけがえのない想い出となるのだから。