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将来の夢

皆さんは、将来何になりたいですか?

何のために塾に通い、中学受験をし、そのあとどんな道を進みたいと思っていますか?

保護者の皆さんは、わが子にどんな職業に就いてほしいと願っていますか?

そして、何のために中学受験をさせるのですか? 


ランドセルの皮革などを作っているクラレという会社が、毎年4月に新小学1年生を対象として「将来なりたい職業」のアンケートを実施しています。今年の結果は下記の通りでした。

 男子…1位「スポーツ選手」(26.7%)、2位「警察官」(8.2%)、3位「運転手・運転士」(7.8%)

 女子…1位「パン・ケーキ・お菓子屋さん」32.3%、2位「芸能人・タレント・歌手」11.1%、3位「花屋さん」11.0%

男子では「宇宙飛行士」が12位に急上昇、女子は「トリマー」や「アイスクリーム屋」が増えているなどの変動はあるそうですが、上位陣はほぼ不動。「警察官」という答えはちょっと意外なように感じますが、実生活やテレビなどで「身近」に感じる職業が上位を占めるのは、当然の結果かも知れません。 

同じ調査の小学6年生の答えは、男子は1位「スポーツ選手」、2位「学者・大学教授・研究者」、3位「IT関係」と顔ぶれがやや変わり、女子は1位が7.4%で「パン・ケーキ・お菓子屋さん」、2位以下の「教員」「芸能人・タレント」「保育士」「獣医師」などがすべて5%前後。学校や塾で勉強したり、パソコンに触れたりすることを通して、子どもたちの興味の幅が拡がり、将来の夢が多様化していくようすがよくわかります。

他方、「新小学1年生の親が、将来就かせたい職業」という項目は、男子の1位が「公務員」、2位「スポーツ選手」、3位「医者」、4位「会社員」。女子は1位「看護師」、2位「公務員」、3位「薬剤師」。男子の2位を除けば「安定」「安心」というキーワードが浮かび上がってきます。

なにか別の調査で、中学生のなりたい職業の第1位が「会社員(正社員)」だった(フリーターにはなりたくないから)というニュースをみた記憶もあります。たしかに就職難のこのご時世、いつまでも夢を追い、霞を食べて生きていくわけにはいかないですからね…。

 「会社員」という答えに「子どもらしくない」「夢がない」と感じる人もいるかも知れませんが、そもそも「会社員」という括り方(選択肢)が不適切なように感じます。

「自動車を作る会社」

「ビルや道路を作る会社」

「ホテルやレストランを経営する会社」

「本や雑誌を作る会社」…

世の中にはいろんな仕事、いろんな会社があって、そこには(生きるために仕方なく働いている人もいるでしょうが)、自分の仕事に誇りをもち、夢や目標をもって働いている会社員もたくさんいる。そうした社会のしくみ、会社のしくみをちゃんと教えていくのも、教育の大切な仕事のはずです。


私は子どもたちにいろいろな伝記を読むことを薦めています。さまざまな時代背景・社会背景のなかで、先人たちがどんな苦労をしてきたのかを知ってほしいと思うからです。ただ残念なことに、子ども向けの伝記はスポーツ選手、政治家、科学者、医者などがほとんどで、「会社を創った人」はあまり登場しません。たしかに会社を興し、発展させていく苦労は、小学生には理解しづらいでしょう。 

でも最近出版された百田尚樹さんの『海賊と呼ばれた男』(講談社)という本などは、是非多くの子どもたちに読んでほしいと思います(よほど早熟な子でなければ読破するのは難しいと思いますが)。この本は出光石油の創業者出光佐三氏の生涯を描いたものですが、戦後の混乱のなかで、日本人としての誇りをかけて、日本経済の復興に尽力する姿は、私たちに勇気と感動を与えてくれます。

森田信吾さんの『栄光なき天才たち』というマンガも私のお気に入りで、最新作『栄光なき天才たち2011』(集英社)では、純国産自動車のさきがけとなる「オートモ号」を作った豊川順彌氏が主人公となっています。こちらも大人向けのコミックですが、自動車や機械が好きな子なら、ドキドキしながら読んでくれるかも知れません。


社会や理科を学ぶのは、決して「志望校に合格するため」だけではなく、社会の成り立ちや仕組み、身の回りのさまざまな機械や道具のしくみを学ぶためであり、社会を支え、機械を作り、人々の生活を支えていくためにいろんな人がいろんな仕事に就いて働いていることを理解するためではないでしょうか。そうした学習を通して、少しずつ自分の将来について、具体的なイメージを形成していくことができるような働きかけをすることが、私たちの務めだと思うのです。