啓明舎(けいめいしゃ)|難関中学受験名門/手を振る

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手を振る

冬期講習中は生徒の出迎え、そして講習明けからは入試の激励と、早朝から外に立つ機会が続いた。今年の冬は寒さが厳しく、腰痛もちには辛い朝だったが、受験生や保護者の苦労を思えば、弱音を吐いてはいられない。

ひとりで通塾してくる生徒を見かけたら、手を振って出迎える。すると、必ずといっていいほど、少し小走りになって駆け寄ってくる。(おはようっ、待ってたぞ)という声が届いたかのように。

子どもたちはみな「勉強は大変だけど、塾は大好き」と言ってくれるけど、でもやっぱり冬の朝は眠いし寒いし、足どりが重くなることもある。そんなとき、誰かが自分に向かって手を振って出迎えてくれたら、「きょうも頑張ろうかな」という気持ちになれるはずだ。

生徒を送り出すときも、大きく手を振ってあげる。(大丈夫。ちゃんと見守っているから。明日もまた待っているよ)と後姿に無言のエールを送ると、子どもたちはやっぱり小走りになって家路に向かっていく。

2月は新たな出会いと巣立ちの時期。今年も130名強の受験生を送り出し、そしてそれ以上の新入生を迎え入れる。誰だってはじめての塾通いには不安を抱くだろうし、受験生たちはそれ以上に、かつて経験したことのない不安と緊張に苛まれている。我々にとっては何十年と繰り返してきた「年中行事」だが、子どもたちにとっては人生初めての大きな転機なのだから。

我々にできること、そして親がするべきこと。それはよちよち歩きを始めた赤ん坊を(転んだらどうしよう)と手を差し伸べて抱き抱えるのではなく、子どもたちの可能性を信じて、(ほら、こっちにおいで)(そうそう、そのまま歩いていきな)と笑顔で出迎え、笑顔で送り出すことだ。

長かった受験までの道のり。でもゴールまではあと僅か。その先には新しい仲間、まだ見ぬ世界が、手を振って君たちを待っている。可愛い後輩たちが君たちの後に続こうとしている。だから心配しないで、笑顔で巣立っていきなさい。見送る我々も笑顔で大きく手を振り、無言で語りかける。「行ってらっしゃい」と。