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思い出の夏

いまだから「告白」してしまいますが、私は小学生時代、一度も塾に通ったことはありません。1年ほど英語塾に通っていましたが、オジサンが自宅で十人位の小学生を相手にカードを使って英単語を教えるだけのお遊び塾で、目的は近くの郵便局の女の子(=山本さん・・・なぜ名前を覚えているのかなあ)が通っていたからです(笑)。もちろん中学受験なんて、考えたこともありませんでした。
小学生時代の夏休みの思い出は、ただ「長かった」ということ。そして8月末に学校の宿題に追われて泣きべそをかいていたことだけ。皆さんの小学校ではどんな夏休みの宿題がありますか? 私が通っていたのは小中一貫の国立付属小(東京でいうと筑波大付属みたいな学校です)で、絵日記・自由研究・絵・工作・読書感想文・・・盛りだくさんの宿題がありました。私は算数以外の教科は全部大嫌いだったので、絵も工作も感想文もずっと放り出したまま。でも地元の小学校じゃないから、近所に友だちもいないし、テレビも子ども向けの番組なんて数えるほどしかなかったし。ただゴロゴロと何十回も読んだマンガ雑誌を眺めて過ごしていたように記憶しています。
そんな、ただひたすら長くて何もすることのない夏休みを「羨ましい」って、思いますか?

最近は2学期の始まりが早くなり、夏休み自体が短くなっている。5年生や6年生は夏休みの半分以上を塾で過ごす計算になります。おまけにサマーセミナーもある。家に帰ると塾の宿題をやらなければならないし、もちろん学校の宿題も。私の小学生時代の夏休みとは雲泥の差です。
この仕事に就いてから26年間、毎日授業・授業の連続で、一度も旅行にも海水浴にも行く暇のない夏を過ごしているので、「何もすることのない、長い長い夏休み」を懐かしく思う気持ちもあります。そして暑い中を毎日塾に通って勉強している君たちの姿をみると、「すごいなあ」「いまの小学生はタイヘンだなあ」と思います。そしてときには「可哀相だなあ」とも。
でも「可哀相だなあ」という思いが10%に対して、「羨ましいなあ」が90%かな? だって、こんなに一生懸命に、自分の目標(夢)に向かって毎日努力することができるなんて、一生のうちにそう何度も経験できるもんじゃないですよ。例えて言えば、高校球児にとっての夏の甲子園大会。でも甲子園大会は勝ち抜き戦だから、1回負けたらそれで終わり。いや、ほとんどのチームはそれ以前に地区予選で敗退してしまうけれど、君たちの戦いはずっと続く。少なくとも中学入試が終わるまでは。

もちろん、「友だちがプールに行ったり、ディズニーランドに行ったりして遊んでいるのに、どうしてボクは毎日塾に通わなければならないの?」「勉強なんかもうしたくない。サッカーしたり好きな本を読んだりしたい」と思うこともあるでしょう。小学生の間だからこそできること、やりたいこともあるはずです。でも40日近い夏休み。毎日プールに行ったり、ディズニーランドに行ったり、テレビを観ていたら、きっと退屈してしまいます。
ゲームも確かに面白いけれど、仕事や勉強の合間に「ちょっと30分だけ」と思ってやり始めたら3時間もハマってしまい、「ヤバい。今夜は徹夜で仕事しなきゃ」とか「明日は朝6時に起きて宿題終わらせなきゃ」と深く後悔し、でもまたついつい手を出してしまう・・・という「後ろめたさ」があるからこそ楽しい。もし何も他に「やるべきこと」がなくて、いくらでもゲーム三昧の日を過ごせるとしたら、全然楽しくなくなります(経験談)。逆に、テストが終わったから明日はのんびり好きなことをして過ごそう、大きな仕事をやり遂げたから今夜は思いっきり遊ぼう、そんな楽しみがあるからこそ仕事や勉強にも熱中できるし、やり遂げたあとの解放感と達成感を満喫できる。それは大人でも子どもでも同じだと思います。

私がこの仕事を選んで本当によかったなと思うのは、毎年2月、入試が終わったあとに、そんな達成感や解放感を満喫している教え子の笑顔をみて、その喜びを共有するときです。でも、一番充実した日々を過ごせるのは、そのために暑い夏を、同じ目標・同じ夢に向かって、気持ちをひとつにして過ごすことができる夏期講習、そしてサマーセミナーです。夏期講習は授業時間も長いし、なにより暑いのが苦手なメタボ体質のオジサンにとっては辛い季節です。でも、いよいよ夏期講習が始まるという時期になると、なぜかウキウキした気分になります。そして自分が小学生のときに、こんなに充実した夏休みを過ごすことができたらなと、いまでももう一度「小学生の夏」をやり直したい気持ちにすらなるのです。

みなさんがこの文章を読んでいるのは、もう夏期講習の真っ盛り。そろそろサマーセミナーの準備を始めている頃でしょう。オジサンたちはそろそろ夏バテに苦しんでいる頃かも知れません。でもきっと、「暑いなあ」「ちょっとバテてきたかなあ」と愚痴をもらしながら、でもきっと、この「ウキウキ感」を忘れずに、君たちに負けないくらい元気に授業をしていることでしょう。
さあ、夏期講習も残りあと××日。毎日全力集中で、一生忘れない思い出になるくらいに充実した夏休みを過ごしましょう!!