啓明舎(けいめいしゃ)|難関中学受験名門/30年目の夏

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30年目の夏

21日間+合宿4日間の長い長い夏期講習が終わった。
最終日は午前中が3年生の授業と父母会、午後は6年のクラス別保護者会。8つのクラスを順繰りに回り、1時から6時までしゃべり続けるという、最後のダメ押しのような超ハードスケジュール。辛くないといえば嘘になる。中学受験の指導を始めてはや30年。「50代になったら君も夏期講習を乗り切ることの大変さがわかるよ」と、大先輩のボヤきを何度も聞かされてきたが、その50代もまもなく折り返し地点を過ぎようとしている。
でも、不思議なくらい、夏期講習期間中は気力も充実し、毎日が楽しくて仕方ない。食欲も旺盛になり、体重も増える。初めて塾を訪れる3年生や4年生の授業も楽しいが、連日8時間以上、合宿中は朝6時から夜9時過ぎまで、まさに「寝食をともにする」6年生たちが、伸び悩むテストの点数に頭を抱え、ときには弱音を吐きながら、受験という目標に向かって、どんどん「ピュア」になっていく様子を見守り、叱咤激励することに専念できるのが嬉しくてならない。
8クラスの保護者の前で、最後まで休まずへこたれずに通い続けた子どもたちへの称賛と、通わせ続けてくれたご両親への感謝の言葉を語ったあと、「あと何年続けられるかわかりませんが、この齢になってもこうして教壇に立って充実した夏を過ごせることを本当に嬉しく思います」と話した。話しているうちに、ちょっと涙目になってしまった。
保護者会のあと、担当していないクラスの母親に声をかけられた。「先生のクラスでお世話になれなくて残念ですけど、お話を伺って私も勇気が沸いてきました。先生、あと5年は頑張ってくださいね。下の子が1年生ですから」。
60歳過ぎてこの激務を続けている自分の姿なんて想像もできないし、潔く後進に後を譲りたいという思いもあるが、1年でも長くこんな夏を過ごし続けたいと心から思える、そんな30年目の夏が幕を閉じた。