啓明舎(けいめいしゃ)|難関中学受験名門/ゲロチーム

ここから本文です。

ゲロチーム

毎年恒例、3泊4日の夏の勉強合宿。初日の夜、授業後にスタッフが集まってミーティングをしている最中に「事件」は起こった。6年生のA君が、居室で食べたものを大量に吐いてしまったという報告が入ったのである。
かけつけたスタッフが目にしたのは、同室の男の子たちが手分けをして、吐瀉物で汚れた寝具をろうかに運び出し、汚れた畳を自分のタオルで拭き、そして一人が「気にするなよ。こんなこと、よくあることだからさ」とA君を慰めている姿だった。
その部屋にいたのは、成績面ではかなり苦労しているクラスの生徒たちだった。「それなのに」という言い方はしたくないし、するべきではない。テストの成績と「人としてのあり方」の間には何の相関関係もないのだから。でも、ふだん指導に苦労しているクラス担当が、「あいつらが、そんな行動ができるなんて・・・」と目を潤ませながら絶句していたのも、やっぱり「ホンネ」だろう。

年端のいかない子どもたちが、夜遅くまで塾に通って受験勉強をする。旅行にもプールにも行かず、夏休みの一番の思い出は、「合宿のときにバスのなかで友達といっぱいおしゃべりができたこと」。それでも全員が志望校に合格できるわけではない。自分自身が中学受験を経験していないので、「かわいそう」という思いがないわけではない。
でも、きっと彼らの「小学6年生の思い出」のなかには、辛かった受験勉強や志望校に合格できなかった無念の思いと同じくらいに鮮やかに夏合宿の記憶が焼きつき、ひょっとして何十年後に同窓生が酒を酌み交わしながら、「いや~、タイヘンだったよなぁ、Aがゲロ吐いちゃったときはさあ」と昔話に興ずるときがやってくるような気がする。

夏期講習が終わり、いよいよ6年生は模擬試験に挑み、「合格可能性×%」という結果に一喜一憂する日々に突入している。自分の担当するクラスではないのだが、「ゲロチーム」の生徒たちが望外な好成績をとってくると、ついつい「よっしゃ」とガッツポーズをとってしまうのも、教師のホンネなのだろう。