啓明舎(けいめいしゃ)|難関中学受験名門/妄想

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妄想

先日の6年生の保護者面談での一コマ。
「息子には『絶対に言うな』と口止めされたんですけど、『オレ、K中には絶対落ちないような気がするんだよな~』って、ぼそっと言うんですよ。まったくもう、どういう神経をしているんだか・・」。
たしかにふだんのテストの成績を見ても、大手模試の結果や過去問の点数を見ても、K中の合格ラインははるか彼方。「根拠なき自信」というより「妄想」に近い発言であり、母親が呆れるのももっともだ。
しかも同じような「暴露話」が2件、3件と続くと、「絶対に夢を諦めるな。諦めた瞬間が敗北なんだ!」と檄を飛ばしてきたことが、はたして「教育的」に正しかったのかどうかと、ふと不安が胸をよぎる。

彼らがまだ受験の厳しさを知らないことも、己の実力を正しく認識していないことも、紛れもない事実である。残り3カ月余り、徹底的に鍛えあげて行かなければならないし、それでも合格できる保証はどこにもない。
だが、挑戦する前から「どうせ無理」と自分の可能性に蓋をしてしまう子どもたちより、どんなに厳しい状況でも「プラスの自己イメージ」をもち続ける連中のほうが、最後には伸びる。だから「併願作戦」だけは慎重に構えた上で、第一志望校は絶対に「勝負」だ。
「成功もあれば失敗もあります。でも挑戦せずして成功はありません。何度も言いますが挑戦しないことには始まらないのです。」野茂英雄の言葉だ。
だから僕は、母親からは「口止め」されたけど、彼らにこう伝える。
「よく言った。それでこそ俺の教え子だ。でもな。『落ちないような気がする』だけじゃダメだ。『なんとかなる』ではなく『なんとかする』。そのためには、いま何をすべきかわかってるよな?」
(やべぇ。母ちゃん、バラしやがった・・)
一瞬、後悔の表情がよぎるが、でも「はい、やります!」と答える。その言葉、忘れるなよ。その気持ち、一生大切にしろよ。