啓明舎(けいめいしゃ)|難関中学受験名門/上を向いて歩こう

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上を向いて歩こう

受験が終わり、はや1ヶ月が経とうとしています。

受験生の皆さんやご両親は、いまどんな思いで、春の足音を待っているのでしょう?

第1志望校に合格し、憧れの制服の採寸も終わり、まっさらの教科書を取り出しては、ぱらぱらとめくったりしている人もいるでしょう。

いまだに無念の思いをかかえ、長年通った塾の先生とも友だちとも顔をあわせることなく、「なぜ自分だけが」と自問自答し続けている人もいるかも知れません。その気持ちは痛いほどわかります。

去年、『半沢直樹』というドラマが大ヒットしました。

私はテレビをほとんど観ないのですが、原作者の池井戸潤さんはデビュー作以来ずっと追いかけている大好きな作家なので、このドラマだけは最初から最後まで観ました。

なにが素晴らしいって、このドラマのなかで「悪役」を演じた俳優さんたちの演技の凄いこと、凄いこと。

主役級の片岡愛之助さんや香川照之さんは別格として、「浅野支店長」役の石丸幹二さんや人事部の「小木曽」役の緋田康人さんが、世にはびこる「小悪人」の、「虎の威」を借りた横暴ぶりや追い詰められたときの往生際の悪さを見事に演じていることが、このドラマを大傑作にしたのだと思います。

「俺だけのせいじゃない」

「上からの命令には逆らえなかったんだ」

「覚えてろ、お前もただで済むと思うなよ」

そんな言い訳や捨てぜりふを繰り返す「小悪人」たちに共通しているのは、「目線」だと思います。

それは「下を向く」「後ろばかり見ている」「まわりをきょろきょろ見渡す」。

目の前の困難から目を背け、ずっと下ばかり向いている人や、

「昔はよかったなあ」と過去の栄光ばかり追い求めている人、

そして「自分だけが貧乏くじを引かないように」と、まわりの様子ばかり伺っている人。

それぞれに「守らなければならないもの」があるのだということは、私自身も一人の社会人として理解できるし、実際に経験したこともあります。でも、だからこそ、次の時代を担う子どもたちには、そんな無様な、「小悪人」のような生き方をしてほしくないと、強く思うのです。

「下を向く人」は、自分より不幸な人(たとえば自分より成績の悪い友だち)を探して、「あれよりはマシかな」と自分を慰めます。

「後ろを向く人」は、「なぜ自分が合格できなかったのか」と、いつまでも過去にこだわり、他の塾に通っていればよかったのか、他の学校を受けた方がよかったのではないかと、後悔の念をひきずります。

「まわりの様子ばかり伺う人」は、失敗した自分をみんなが笑っているのではないか、哀れみの目で見ているのではないかと思い、やがて心を閉ざして引きこもってしまいます。

でもそういう「弱い心」は、誰もがもっているものであり、私はそのことを責めるつもりはありません。

なにより私自身が、とても「弱い心」の持ち主であることを自覚しています。子どものころは「いじめられっ子」であると同時に、もっと弱い立場の友だちのいじめに加担したこともありました。

私と比較するのはあまりにもおこがましいのですが、たとえばイチロー選手も、ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授も、自分の心の弱さやさまざまな挫折体験を、インタビューや講演で語っています。

大切なのは「心を強くする」ことではなく、「心の弱さ」を認めることなのかも知れません。

よく「中学受験はゴールじゃなくてスタートだ」といいます。でも、これまで「志望校合格」というゴールを目指して懸命に走ってきたのだから、「さあ、ここからがスタートだよ」と言われても、そんな簡単に気持ちを切り換えられるはずがないのです。

だから、どうしても我慢できなかったら、思いっきり泣きなさい。思いっきり悔しがりなさい。1週間くらい田舎のおじいちゃんの家にでも行って、ぼ~っと夕日を眺めて過ごすのもいいでしょう。

むしろ「まあ、どうせダメ元だと思ってたから、平気さ」なんて強がりをいうよりも、そのくらい悔しがり、思い悩んだ方が、ずっと人間を成長させてくれるはずです。

ただ、あと1ヶ月もすれば、新天地での生活が待っています。

「本当はこんな学校に行くつもりじゃなかった」なんて気持ちをひきずっていたら、せっかくの中学生生活が、とてもつまらないものになってしまいます。公立中学に進学し、高校受験を目指す人もいるでしょう。でも「高校受験ができる」ということは、「リベンジ」や「倍返し」のチャンスが目の前に広がっているわけですから、「よっしゃ、もう一度チャレンジできるんだ」と喜ぶべきなのです。

だから、上を向いて歩きましょう。

前を向いて歩きましょう。

まわりのことなんか気にせずに、自分の進む道をしっかりとみつめましょう。

「どこにいても、何歳でも、成長できる」

プロサッカー選手の遠藤保仁さんが、今年1月に放送された『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK)という番組で語った言葉です。

ちなみに私も先月で55才になりましたが、今でも週6日教壇に立ち続けていますし、まだこれからも成長していくつもりです。

ましてまだ12才の君たちの人生が、「どの中学に進学したか」によって決まるはずなどありません。

さまざまな思い出とともにつかみとった新天地で、皆さんがさらに成長し、数年後、また次の成長と活躍の場へと羽ばたいていくことを、心から祈っています。