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受験は「見切り発車」でうまくいく?

「見切り発車」って、どういう意味か、わかりますか?

もともとは、電車が満員になったり発車時刻になったりしたために、まだ乗客が全員乗り切っていないのに出発してしまうこと。そこから転じて、十分に準備もできていないのに、「もういいや、これで」と結論を出して、仕事などを始めてしまうことを表します。

たとえば「見切り発車でテストに臨む」と、どういうことになるでしょうか。十分に勉強もしないで、「まあ、いっか~」という気持ちでテストを受ける。当然、テストの結果はよくない。そしてお母さんに怒られる。

「だから言ったでしょ。前の日にちゃんと復習しておきなさいって。テストが始まる前も漢字の見直ししなかったでしょ?もう何回言ったらわかるのっ!!」

それなのに「見切り発車でうまくいく」とは、いったいどういうことなの?そう疑問に思うのは当然でしょう。

受験生にも役立つ、IT社長のビジネス本

今回みなさんに紹介するのは、その名もズバリ『人生は見切り発車でうまくいく』(奥田浩美著総合法令出版)という本です。

奥田さんはIT業界で活躍している会社の社長さんで、いまは徳島県の限界集落(過疎化・高齢化が進み、集落として存続できなくなっている地域のこと)に新しい会社をつくり、お年寄りにiPadの使い方を教えたり、あたらしい商品を開発したりして、村おこしを進めている、とてもパワフルな女性です(ちなみに、私の教え子のお母さんでもあります)。

『人生は見切り発車でうまくいく』は、奥田さんが自分の経験をもとに、これから社会人として活躍しようとしている人や、あたらしく会社をつくろうとしている人たちに向けて書かれた「ビジネス書」(つまり大人向けの本)です。

でもこの本には、受験生である皆さん、つまりこれからの社会を担っていくべき「人材(人財)」である子どもたちのために書かれていることがたくさんあるのです。

「苦手」は成長のチャンスだ

たとえば奥田さんは、本の冒頭で次のように書かれています。

あなたに「知恵」が不足しているということは、他の知恵を受け入れる余地があるということです。
あなたに「能力」が不足しているということは、他の能力を受け入れる余地があるということです。
そういう未熟さがあるからこそ、一歩前に踏み出したとき、他の人が知恵や能力を持ち寄ってきてくれると思うのです。
「見切り発車」ですから、これから先、ちょっとした失敗をすることもあるでしょう。しかし、目的地に向かうためにする失敗であれば、それは失敗とはいいません。むしろ「成功へ向けての学びのステップです。」(8~9ページ)

もう、これだけで「おなかいっぱい」と思えるくらいに、力強くて、元気がでてくる文章ではないでしょうか?

「理科が苦手」…だからこそ理科の勉強をすればテストの点数が上がる余地がある。

「計算のスピードが遅い」…だからこそ計算練習をすれば成績が上がる可能性がある。

「クラスが下がっちゃった」…だからこそ次のテストでクラスが上がるチャンスがある。(一番上のクラスになったら、もうそれ以上「上がる」ことはできませんからね)

すべてを「目的地=志望校」に向かうための失敗であり、試練であると考えれば、それは決して「失敗」ではなく、成長のためのチャンスなのです。

「できない」なんて絶対に言うべきじゃない

こんな一節もあります。

「『できない』はNG、『できなかった』はOK」
できるかどうかを試しもせずに「できない」と簡単に言ってしまうのは、実は「面倒だからやりたくない」とか「できる方法を検証しようとしていない」という甘えた心理の表れです。実際にやってみて、結果的にどうしてもダメだったときにはじめて「精一杯やってみたけど、できなかった」と言ってみてはいかがでしょうか。」(75ページ)

この一節を読んで私は

「『どうせ無理』ということばを世界から追放したい」

という植松努さんのことばを思い出しました(植松さんの『NASAより宇宙に近い町工場』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本も、私の大好きな本です。この本のことも機会があれば紹介したいと思っています)。

「できない」「どうせ無理」…たしかに受験勉強は大変だけど、志望校に合格するのは簡単なことではないけれど、少なくともあと半年(=180日)×1日6時間勉強すれば1000時間以上もの時間が残されているのに、まだ本気の本気で勉強したこともないのに、「できない」なんて絶対に言うべきじゃない。いや、中学受験が終わったあとも、君たちの人生はまだ延々と続くのだから、最後の最後、どうしてもあと一歩目標に届かなかったときに初めて、

「精一杯やってみたけど、できなかった」

そういって、悔し涙を流し、また次のステップへと進んでいくべきなのです。

残り半年…結果を恐れず、全力で戦おう

他にも、元気と勇気をもらえることばがたくさんあります。

「不得意なことは、得意な人に頼ってやり方を学ぼう」

「ピンチは自分を成長させる絶好の機会」などなど。

でも、かっこいいセリフやためになる「名言」は、書くだけだったら誰にでも書けるでしょう。インターネットで調べれば、「イチローの名言」とか「エジソンの名言」とか、いくらでもヒットします。大切なのはそのことばが、書いた人の経験と、読者に対する想いに裏打ちされているかどうかです。だからこの先は、実際に奥田さんや植松さんの本を読んで、自分で「感じて」みてほしいと思います。

最後に、私自身のことばで、「受験における見切り発車」とは何なのかをまとめておきましょう。

それは決して、「まあ、いっか~」「どうせ無理だし」とあきらめて、適当な気持ちでテストを受けること…ではありません。むしろテスト直前の1分1秒まで、徹底的に「あがく」(たとえば漢字の見直しをする)べきなのです。

でも、どんなに準備をしても、カンペキな結果(たとえば4教科全部満点)なんて、そうやすやすと手に入るはずはありません。

不安なのは自分だけじゃない。だから、失敗を恐れず、強い気持ちで取り組むこと。

1回のテストで人生が決まるわけじゃない。だから、結果を恐れずに全力で戦うこと。

そして、君たちは自分一人で戦っているんじゃない。まわりには、君たちを応援してくれる家族や友だちや塾の先生がいる。君たちが前向きな姿勢で勉強していれば、絶対にいろんな人が助けてくれる。

そのことを忘れずに、残り半年、志望校目指して、充実した日々を過ごしてください。そうすればきっと、君たちの前には新しい道がひらけていくはずです。