ホーム > 塾長 後藤卓也のつぶやき > 子供時代の失敗談

ここから本文です。

子供時代の失敗談

 夏期講習から塾に通い始めた小学生が100人以上いて、その約半数を授業で担当している。

 2、3年生の男子はたいてい怖いもの知らず。どんなにとんちんかんな答えでも、「はい、はい!」と我先に答えてくれる。女子は少しだけ控えめな姿勢を示すが、「よーし、正解!」と褒めると、「当然でしょ?」みたいな表情を示す。これはこれでかわいい。

 しかし4年生にもなると、周りの子よりスタートが遅れていることを感づいているのか、それとも学校か家庭で、「算数が苦手」というレッテルを貼られたのか、答案を隠そうとしたり、手を挙げるのをためらったりする。教室に入ってきた時点で、警戒心をあらわにする子も少なくない。

 そんなとき私は、自分の小学生時代の話をする。ものすごく気が小さい子供で、先生に指名されて立ち上がったが、緊張して何も言えず、おもらしした話。大学生になっても、ゼミの発表では足も声も震えていたし、今も父母会で話をするのは大の苦手だ。

 何度も失敗をして、それでも拍手を送ってもらったり、「いいお話でした」と声をかけられたりするうちに、ちょっとずつ勇気がわいてくる。サッカーだってピアノだって、初めは誰も初心者なんだよと話すと、少し表情が和らぐ。間違った答えでも、「惜しい!」と声をかけて、△をつけると、うれしそうな顔をする。

 そんな子の家庭に、様子を伺いの電話をかけた。「算数がちんぷんかんぷんで今も半泣きでパパと一緒に宿題をやっています……。でもどういうわけか、『塾は楽しい。こんなに楽しいところは生まれて初めてだ』っていうんです」。母親の言葉に、一番勇気をもらっているのは私自身なのだ。

 初めての塾通いで緊張している子に心を開かせるのは容易ではない。もし私にいくぶんでも教師の資質があるとしたら、それは心の中に、「ものすごく気が小さかった子供のころの自分」がいるからなのかもしれない。