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難しい理科、実は対策立てやすい

秋も深まり、いよいよ中学入試(東京・神奈川)まであと3カ月。そろそろ6年生の皆さんは、志望校の「過去問」演習に取り組み始めていることでしょう。

私はずっと算数と理科を教えてきたのですが、算数に関してはほかの「マナビレンジャー」の先生がステキなアドバイスをしてくれていますから、今回は理科の「最後の頑張り」学習法を伝授しようと思います。

頑張って教えたのに…一番苦手な教科は「理科」

ところで皆さんは、理科、好きですか?

今年の2月。いま担当している6年生のクラスで最初の授業を行ったとき、「どの教科が苦手か」というアンケート調査をしました。その結果、クラスの半数以上が「一番苦手」と答えたのが理科でした。

いや~、ショックでしたわ。なぜなら、5年生のときにそのクラスの理科を教えていたのが、私自身だったからです。1年間、懸命に「理科の楽しさ」を語り続けてきたはずだったのに、男子の約半数と女子のほぼ全員が「理科が一番苦手」と答えた。そのときの衝撃が、皆さんにはわかりますか?

でも、「苦手だ」と答える気持ちも、実はよくわかります。教えている私自身が、「最近の受験生はタイヘンだなあ。こんなに難しいことまで勉強しなければならないのだから」と、あきれるくらいなのですから。

進学校に求められる、理系教育の充実

ちょっと話は変わりますが、最近、どんな学校が人気を集めているか、知っていますか?

いまの学校選びのキーワードは、「理科教育」と「グローバル教育」の二つです。「進学校」を選ぶ場合は、昔のようにただ「東大や慶応・早稲田のような有名大学に何人合格したか」ではなく、「理系(医歯薬系・理工系)の大学に強いかどうか」が判断基準になりますし、大学付属校を選ぶ場合でも、理系の学部が充実していなければ、伝統ある大学でもなかなか人気が集まりません。

お父さん・お母さんの立場では「理系のほうが就職に有利だから」ということになるでしょうし、日本という国全体の未来を考えれば、土地も食料もエネルギー資源も乏しいなかで、高度な科学研究や精密な技術力をもって、厳しい国際競争を勝ち抜いていかなければならないという状況もあります。

日本の未来のためにも…難しくなる入試問題

2000年以前に「理系」分野でノーベル賞を受賞した日本人は、湯川秀樹(1949年、物理学)、朝永振一郎(65年、物理学)、江崎玲於奈(73年、物理学)、福井謙一(81年、化学)、利根川進(87年、生理学・医学)と、50年間でわずか5人だけでしたが、最近15年間で14人と激増しました。

こうして、さまざまな方面で日本の科学者・技術者が素晴らしい活躍をされていると同時に、私たちは、東日本大震災や、つい先日の御嶽山噴火のような、「すぐ目の前にある」大自然の驚異にさらされ、それと立ち向かっていくことが求められています。

だから、どの大学や研究所も企業も政府機関も、優秀な科学者・技術者を集め、育てていくのに必死です。そのために大学入試制度を改革し、理科の選択科目を増やす。当然、中学・高校側は、大学入試の変化に対応するために、カリキュラムや教材や特別学習プログラムを整備する。そしてその学習についてくることのできる新入生を集めるために、理科の入試問題を難しくする。

要するに君たちは、未来の日本を担う人材となるために、一昔前とは比較にならないほど難しい理科の入試問題に挑まなければならなくなっているのです。では実際、最近の理科の中学入試ではどのような問題が出題されているのでしょうか?分野別に見ていきましょう。

化学・物理は高校レベル、地学はセンター試験並み

理科の入試問題が年々難しくなっていることは、間違いありません。私がこの仕事を始めたころ(30年前)と比べると、各分野について、次のような出題傾向の変化がみられます。

化学 昔は水溶液の性質とか、燃焼・ものの溶け方などについて、実際に小学校でも実験する(できる)ような内容が中心だったが、いまは「イオン」とか「電気分解」、中学高校レベルの化学反応の計算問題が普通に出題されている。「分子構造(原子と原子がどうやって結合して分子になるか)」の規則を考えさせるのも最近の流行りネタのひとつ。

物理 電気や力のつりあいなどは昔からよく出題されているが、ただ「豆電球の明るさを比べる」だけではなく、「電気抵抗の計算」「電流と発熱の計算」「電磁誘導」「LED」「コンデンサ」など、高校物理で学んでいたことが出題されている。

地学 かつては「地層と化石」とか「流水による地形」がほとんどだったのに、いまは「地震波の伝わり方」「地球の内部構造(プレート・テクトニクス)」「地球楕円体」などが、ごく当たり前のように出題されている。地学分野の中学入試問題は、大学の「センター試験」と出題内容がほぼ同じといっても過言ではない。

生物 生物だけは比較的、難易度の変化が少ないが、単純な「知識」問題は減少し、やはり大学入試と共通の話題が増えている。

しかも、大学受験では普通この4分野のなかから二つを選んで試験を受けるのに対し、中学受験生は「全部」勉強しなければなりません。覚えなくてはいけない知識の量は、「地理・日本史・現代社会・時事問題」のすべてを扱う社会ほどではありませんが、内容については、こんなに難しいことを勉強している小学生はおそらく世界中、どこを探してもいないのではないかと思うほどです。

ほとんど「記号選択式」…問題は難しいが、記述式はあまりない

さて、ずいぶん受験生の皆さんを脅かしてしまいましたが、実は理科は、問題そのものは難しいのですが、対策が立てやすい教科でもあるのです。

理科の問題は、ごく一部の学校を除けば、「記述式」の問題はあまり出題されません。どの学校でも4科目のうち理科の試験は最後に行われるため、理科はあまり採点の手間のかからないような形式にすることが多いのだと思われます。

実際に自分の受験する学校の過去問を解いてみれば、ほとんどが「記号選択式」であることに気づくはずです。しかも「選択肢」が3つの問題が多い。たとえば「ア.明るいイ.変わらないウ.暗い」みたいな問題ですね。選択肢の多い問題でも、「これは絶対にありえないだろう」とわかるものを消していくと、最後はAかBかのどちらかに絞られることが少なくありません。

なぜ間違えた?…「直しノート」で振り返ろう

したがって過去問の復習をするときには、「なぜこの選択肢を選んでしまったのか」「なせこの答えが間違いなのか」をちゃんと考える必要があります。「直しノート」を作るときに、「問1=ア問2=ウ」みたいな直しをしても何の意味もないのです。「なぜ間違えたのか」をちゃんとノートにまとめていくことを積み重ねていけば、実は同じような間違いを繰り返していることに気づくはずです。

化学や物理(力のつりあいや電流)の計算問題は、1問ごとの配点が高い場合が多く、また前半の問題を間違えると連鎖的に失点してしまう危険性が高いので要注意ですが、ほとんどは「比例」「反比例」の計算なので、これに関しては練習を重ねるしかありません。ただし計算問題の出題頻度は学校ごとにほぼ決まっているので、対策は立てやすいはずです。

難問はほかの受験生も解けない…解ける問題を確実に

かつて、首都圏最難関女子校の入試で、理科の問題用紙2枚のうち丸々1枚がすべてジャガイモについての問題だったことがありました。それもすべて知識問題です。ほかにも、メダカについての問題が10問出題されたり、セミの生態について延々と問われたり。こういった問題は対策を立てるのが困難でしたが、最近は、こういう偏った出題をする学校はほとんどなくなりました。

ふつう中学受験では出題されないような難しい問題が出題されれば、ほとんどの受験生が解けないので、合格に必要な点数は下がります(これは理科に限ったことではありませんが)。だから、「自分に解けない問題はほかの受験生も解けないはずだ」と開き直って、解ける問題を確実に解いていけばよいのです。

問題を「やり直す」…短時間の集中学習で得点アップ

細かいことを言い始めるとキリがないのですが、とにかく理科の入試問題は内容的にはものすごく難しい(場合が多い)けど、比較的点数がとりやすい(勉強したことの成果が表れやすい)科目なのです。ただしそのためには、問題を「やりっ放し」にしないで、ちゃんと「直し」をすることが大前提です。

算数や国語の問題を「やり直す」には、どうしても時間がかかります。理科は比較的短時間に集中的に学習することで、点数を稼ぐことができます。だから、「理科が苦手」とか「天体とかは無理」と決めつけずに取り組んでください。

そして、受験生の皆さんは「いまはそれどころじゃない」と思うかもしれませんが、受験勉強で学んだことを中学に進学したあとでも活用できるのが理科という科目だと私は思っています。志望校に合格するためだけではなく、将来の日本を支えていく人材になるための礎として、理科の学習に励んでほしいと思います。