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「やる気スイッチ」より大事なこと

この文章が掲載されるのは2月3日ですから、多くの受験生はまだ戦いの真っ最中。特に国立や公立の中高一貫校を目指しているみなさんにとっては、まさにきょうが「本番」ということになります。

しかし、これから「本番」の試験に臨もうという朝に、インターネットを見ている人も少ないでしょうから、この場をお借りして、すべての受験生が、最後まで諦めずに挑戦し続け、素晴らしい春を迎えられることを心からお祈りするにとどめて、今回は、来年以降に受験を控えている新6年生以下の読者のみなさんに向けてお話をすることにします。

ウチの子の「スイッチ」って、どこにあるの?

みなさんは「やる気スイッチ」という言葉を耳にしたことがありますか?

これはある塾がテレビCMで使ったキャッチコピーだそうで、個人面談などでも「ウチの子の『やる気スイッチ』はどこにあるんでしょう。先生、教えてください……」と、ため息まじりに相談されることが、何度もありました。

ちなみに私はこう答えます。

「どこにあるかわからないスイッチを探すより、まずちゃんと電池を充電してください」

ほかの塾のキャッチコピーだし、自分にはそんなシャレた文句を思いつく才能がないから、悔し紛れに「スイッチよりも電池です」と切り返した……わけではありません。

先生、友達、恋…勉強に打ち込むきっかけはいろいろ

「やる気」のスイッチというのは、本当に探すのが難しいし、一度スイッチを入れても、何かの拍子ですぐに切れてしまったりするものです。学年やクラスが変わり、新しい先生に教わるようになったり、同じ学校を目指す仲の良い友だちと出会ったりすることで「スイッチ」が入ることもあるでしょうし、同じ野球チームの先輩が第一志望に合格したのを見て「よ~し、ボクだって」と奮起することもあるでしょう。

そういえば数年前、同じ塾に通う大好きな女の子にマジで「告白」し、「A中に合格したら、考えてもいいわ」といわれて、猛烈に勉強し始めた、かなりマセた教え子もいました。

また、1月中に「試し受験」をした学校でまさかの不合格となり、そこからようやく「スイッチ」が入って、見事第一志望合格という例も、毎年何人もいます。

しかし、まったく同じ状況でも、先生が代わったり、告白した相手にフラれたり、不合格で意気消沈したりして、スイッチが切れてしまう可能性だってあるわけですから、「ここを押せばスイッチが入ります」というマニュアルは、残念ながら存在しません。むしろ「スイッチ」というのは「運」、または「巡り合わせ」だというくらいに考えておいたほうがよいと思うのです。

それよりずっと大切なのは、「電池を充電すること」です。

充電とは「目標」「面白さを知る」「褒められる」

「充電」の方法は大きく分けて3つあります。

ひとつめは、「目標」(志望校)を見つけること。

ふたつめは、「勉強」(教科)そのものの面白さを知ること。

そして最後は、「褒めて(認めて)もらう」こと。

「充電」は基本的に大人、つまりみなさんのご両親や塾の先生がする仕事なのですが、少なくとも「充電には時間がかかる」ということと、しっかり「充電」しておかなければ、いくら「スイッチ」が入っても、ちゃんと光らないということは、肝に銘じておいてください。

なかなか上達しなくても…続けることでわかる「面白さ」

特に、ふたつめの「教科そのものの面白さ」を知るためには、すぐに「結果」にこだわらないこと。もちろんテストの成績が上がれば、それだけ勉強も面白くなるでしょうが、なかなか上達しなくても、あきらめずに続けることではじめて「面白さ」を知ることのほうが多いのです。

たとえば野球やサッカーをやっている人ならば、そんなに簡単にホームランを打てたり、華麗なループシュートを決めたりできるはずがないことはわかっているはずです。将棋が好きな人なら、最初のうちは何度やっても負け続けて、その悔しさをバネにして少しずつ強くなり、本当の将棋の楽しさを発見するものだということがわかるでしょう。自分より弱い相手とばかり戦って、仮に百戦百勝しても、絶対に将棋の面白さはわからないでしょう。勉強だってそれと同じなのです。

「ON/OFFの切り替え」ができると、成績アップ

「やる気を出すためのスイッチ」は簡単には見つからないといいましたが、心がけ次第で、上手に「充電」することができるようになる「スイッチ」は存在します。

それは「ON(入)」と「OFF(切)」の切り替えスイッチです。

まずは、勉強する時間と休憩時間のON/OFFの切り替え。実はこれが一番難しいことなのですが、この切り替えができるようになると、驚くほど成績は伸びます。

数年前、6年生の7クラス中4番目のクラスを担当したときのことです。春期講習から授業に入ったのですが、とにかく最初のうちは、授業の合間はもちろん、テストの最中でも「先生、トイレに行っていいですか?」という子が多くて驚きました。まさか我慢しろともいえないので許可すると、「あ、ボクも」「わたしも」と、他の子も次々に席をたち始めます。当然、授業は中断し、緊張感も集中力も途切れます。とりわけトイレに立つ回数が多い子のお母さんに話を聞くと、家で勉強するときも、すぐに「のどがかわいた」とか「ちょっと気分転換」といって、机に向かう時間が10分と続かないということでした。

少しずつ「ON」の時間を長くしよう

自宅で勉強するときも、とりあえず30分、慣れてきたら1時間というように時間を区切って、その間は絶対に机から離れないようにアドバイスをし、塾でも、解説を聞く時間、小テストの時間、ちょっと雑談タイムというように時間の区切り、つまりON/OFFを意識させるようにしたら、1~2か月で、「先生、トイレ」はほとんどなくなりました。成績が上がり始めたのもその頃です。

勉強と休憩時間のON/OFFにあわせて、勉強する教科も「切り替え」をすると、より効果的です。算数を1時間やったら、まだ宿題が全部終わっていなくても、今度は社会をやるというように、得意な教科と苦手な教科を交互にやるのもよいでしょう。

それから、いきなり長い時間「ON」を続けようとしないこと。集中できる時間は、年齢と経験値に応じて長くなっていきます。これまで10分しか集中できなかったとしたら、とりあえず目標は「15分」とか「テキスト1ページ」というように、少しずつ長くしていくのが秘訣なのです。

言い訳はしない…全員が集中するクラスが伸びる

中学入試はふつう4教科(算数・国語・理科・社会)受験なので、塾のテストももちろん4教科です。

私たちの塾では、基本的に担任の先生が自分のクラスのテスト監督をするようにしているのですが、1教科のテストが終わり、「はい、そこまで」と宣告した瞬間に、「死んだ~」「もうダメだ~」とボヤき始めたり、「3番の答え、何にした?」と隣の子に話しかけたりする生徒がいます。

そしてこういう生徒は、答案の回収が終わるとすぐに席を立ち、やっぱりトイレに行って「難しかったよね~」「次の社会もヤバいんだよ~」などとおしゃべりをしています。

「テスト中は私語厳禁」というのは当たり前のルールですが、テストとテストのあいだの休憩時間も、重苦しいほどの沈黙が支配するようになると、そのクラスの成績は伸びます。黙ってトイレに行く生徒、次の科目のテストに向けて、ノートの見直しをする生徒、目を閉じて気持ちを沈めている生徒。全員が本気で集中して取り組んでいれば、必ずそういう雰囲気ができあがってくるものです。

入試本番で味わう、真剣勝負の後の静寂

毎週日曜日に、「NHK杯」という将棋のトーナメント戦がテレビで放映されていますが、戦いが終わったあとのプロ棋士は、しばらくのあいだ何もしゃべりません。無言で、力尽きたように深くため息をつき、しばらくしてからようやく「感想戦」と呼ばれる反省会を始めます。終わった瞬間にべらべらしゃべり始める棋士はほとんどいません。それは、最後の1分1秒まで「集中」し続けていたからだと、私は思います。

将棋を知らなければ、剣道の試合でもいいし、ピアノの演奏会でもいいでしょう。終わった瞬間に、「いやあ、失敗しちゃったよ~」なんてボヤく選手やピアニストがいますか?

いまは「なんとなく」しかわからないかもしれませんが、何年後かに中学入試の「本番」を経験すれば、きっとわかるはずです。「真剣な戦い」のあとの「静寂」の意味が。

メリハリつけた時間配分で、勉強の面白さに気づく

私は、勉強というのは本来「楽しいもの」だと思っていますし、少しでも楽しく塾に通ってほしいと願っています。友だちどうしの会話も、先生との雑談も、たっぷり楽しんでほしいと思います。

でも、問題を解くときやテストに取り組むときは別です。

繰り返しになりますが、まずはふだんから、家で勉強するときも「ON/OFF」の切り替えスイッチをちゃんと意識すること。そして「ON」の時間を少しずつ長くしていき、けじめやメリハリのある勉強をすること(逆に遊ぶときは、すべてを忘れて思いっきり遊ぶのも大切なことです)。

それをコツコツと続けていけば、きっと勉強そのものの面白さに気づき、そしてやがて成績も上がってくると信じて、頑張っていきましょう。