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「試練の夏」前に学校見学へ行こう

6年生の皆さん、もう志望校は決まっていますか?

まだ決まっていない人は、ぜひ夏休みの前に志望校を決めましょう。「本当は××中に行きたいんだけど、偏差値が足りないから・・」なんてモジモジしている人は、墨をすり、筆を手にして、「××中絶対合格!」と書きましょう。「もう決まっている」という人は、お父さん、お母さんにお願いして、もう一度その学校を見に行ってみましょう。「なぜこの時期なのか?」は、のちほどお話しします。

学校見学…校長先生が自ら案内してくれた2校

私は6月中旬の10日間で、6つの学校を訪問しました。私立の男子校が3校、私立の共学校が2校、そして都立一貫校が1校です。

結論からいうと、どの学校も素晴らしい学校で、同行したお母さんたちも「行く学校、行く学校がどこも素敵にみえて、悩んじゃいます・・」と口々に言っていました。私もまったく同感です。それぞれの学校について語りたいことはたくさんありますし、今回訪れる機会のなかった女子校にも素晴らしい学校はたくさんあるのですが、たまたま数少ない男子校の訪問が重なったので(首都圏には中高一貫の男子校は40校弱しかありません)、今回は男子校の話をしようと思います(女子の受験生の皆さん、ごめんなさい)。

3校のうちの2校(A校とB校と呼ぶことにします)は、びっくりするほどたくさんの共通点がありました。

(1)この1年以内に校舎の全面改築が終わったばかりである

(2)A校は神奈川の広々とした丘の上に、B校は都内の住宅地にあるのに、どちらも広々とした人工芝のグラウンドがある

(3)A校の校長先生はその学校のOBでもあり、長年その学校で勤務されてきた「生え抜き」の先生であり、B校の校長先生は2年前に都立の一貫校から移ってこられた女性校長であるという、大きな違いがあるにもかかわらず、2人とも一人で1時間以上、「男子校の教育の意義」について「熱弁」をふるわれた(仕事柄、いろんな学校を訪問しますが、この2人は首都圏全体でも5本の指に入るくらい、お話が上手です)。

(4)A校・B校とも、校長先生自ら、学校見学のガイド役をしてくださった

(5)A校とB校の校名をひらがなにすると、最初の2文字が同じである(どの学校か、わかっちゃうかな?)

ついでに、私がA校を訪問した2日後に、2人の校長先生がはじめて「対面」してすっかり「意気投合」され、その2日後に私がB校を訪問したのですから、世の中には不思議な「偶然」があるものですね。

生徒が「自炊」できる自習施設、「成績最下位」への温かい目

A校訪問で一番感銘を受けたのは、学校の敷地内にある保養施設(クラブの合宿などで利用する)が毎日(日曜・祝日も)夜9時まで開放されていて、高校3年生の3分の1近くが毎日「自習」しているということ。施設にはキッチンと炊飯器と生徒専用の冷蔵庫があり、勉強の合間にみんなで「自炊」をして夕飯を食べているのだそうです。この保養施設、ふだんは「見学ルート」に含まれていないそうなのですが、ガイド役の校長先生の特別なお計らいで、冷蔵庫の中まで見せていただくことができました。

男子は女子に比べると成長が遅くて幼いけれど、「きっかけ」と「仲間」がいると、驚くほどの集中力を示す。だから中学の成績が悪くて「進級会議」(中学から高校に進級できるかどうかを決める会議)で、担任の先生が「この子の成績ではウチの学校にはついていけない」と報告しても、「男の子が伸びるのはここからなんだから、進級させましょう」という校長先生の「鶴の一声」で、この12年間全員が高校に進級しているそうです。校長先生の温情で進級した「成績最下位」の生徒が、「去年は現役で早稲田大学に合格しましたよ」と語るときの校長先生の嬉しそうな表情は、今でも忘れられません。

「海の学校」の「お兄さん役」…受け継がれる伝統

B校で一番感動したのは、中1の「海の学校」の様子。毎年何十人かの高校2年生が「選抜」されて、1人の高校生が5人の中1生の「お兄さん役」をつとめるのがB校の「伝統」だそうです。選ばれる高校生は、水泳が得意であるのは当然として、「中1生から憧れられるようなカッコイイ先輩」でなければダメ。まだまだ小学生気分が抜けない中1生に「説教」をしたり、中1生が眠りこけている朝5時くらいから、その日の遠泳のための準備をする。

彼らは4年前に自分が中1生だったときの「先輩」の姿を思い出し、「今度は自分の番だ」と、選ばれたことを誇りに思い、「弟分」たちの安全を守り、集団行動のルールを指導するという「大役」をつとめる。そうやって「世代」から「世代」へと受け継がれていく伝統こそがB中の教育の真髄である。・・・「都立」の「共学校」から2年前に「私立」の「男子校」に赴任したばかりの校長先生が、「男子校教育の意義」と「私学だからこそ長年にわかって受け継がれてきた伝統」、そしてそうした「伝統」のなかで育っていく男の子たちの様子を生き生きと、本当に楽しそうに語ってくださったことが非常に印象的だったのです。

協力して「自炊」しながら、夜遅くまで仲間たちと受験勉強に励む高3生の姿、ピカピカの1年生を前に「兄貴分」を演じる高校生の姿。私はごくふつうに高校受験をして地方(愛知県)の公立高校に通い、幼稚園から大学まで一度も「私立」に通ったことがないので、もし、もう一度生まれ変わることができたら、こんな学校で青春時代を過ごしたいと、心の底から思いました。

「偏差値が高いから」「家から近いから」…それで志望校を決めていい?

実は、私はいまの中学受験のあり方について、大きな不満を抱いています。それは、こんな素敵な学校を見学する機会が、こんな素晴らしい校長先生の話を聞くチャンスが、君たち受験生にはほとんどないということです。

皆さんは学校見学をしたことがありますか?いま、ちょうど6年生の個人面談の最中なのですが、最近は土曜日も小学校の授業や行事があるし、日曜日は塾があるし、ということで、せいぜい「文化祭や体育祭に行ったことがある」という程度で、大半の受験生はふだんの中学生や高校生の授業風景を見たり、校長先生のお話を聞いたことはないそうなのです(「日曜日に塾があるのはお前たちのせいじゃないか」と言われるかも知れませんが、もともと日曜日は休日なので「授業風景」を観ることはできませんからね)。

これからいよいよ「勝負の夏」を迎え、そしてこの先7か月、遊びたい気持ち、なまけたい気持ちを抑えて、必死に受験勉強をする。それは、これからの6年間、人生のなかでもっとも輝かしい、一生の財産になるような思い出を作る時期を過ごす場所をつかみとるための「試練」なのです。

それなのに、「文化祭に行って、鉄道研究会のジオラマがかっこよかったから」とか「校舎のエントランスにあるらせん階段が素敵だったから」とか、さらには「偏差値が高いから」「仲のよい友だちも受験するから」「制服が可愛いから」「家から近いから」などという理由で、自分の人生を決めてしまっていいのですか!!

部活動、下校中…「午後3時ごろの学校訪問」で出会える先輩たち

とはいえ、まさか小学校の授業をサボって学校見学に行くわけにはいかないでしょうし、校長先生の話を聞いて「教育理念」の違いを理解し、自分に一番ふさわしい学校を選ぶというのは、小学生にとってはかなり無理難題かもしれません。

でも、「その学校に通っている先輩たちのふだんの姿」を見ることは、決して不可能ではありません。運動会の振り替え休日とか、創立記念日とか、職員会議で午後の授業がないときとかはあるはずです。そういうチャンスを利用して、午後3時くらいに、すでに決まっている「志望校」や、先生やご両親が勧めてくれる学校を訪問してみましょう。学校説明会や「オープンスクール」の日でなくても、受験生の親子であれば、簡単にキャンパスを案内してくれたり、入試担当の先生に話を聞くことができたりする学校は少なくありません。

そうでなくても、授業が終わったあとで思い思いに部活(クラブ活動)に参加したり、友だちと駅までの道を歩いたりする姿を見ることはできます。「こんな先輩や仲間たちと6年間、この通学路を歩くんだ」と想像しただけで、この「試練の夏」を迎える覚悟、残り7か月を全力で駆け抜ける決意がふつふつと沸いてくるはずです。

「心に決めた志望校」…受験勉強を通して手に入る最高の宝物

もちろん、そうして「心に決めた志望校」が見つかったとしても、その学校に合格できるという保証はありません。「憧れ」が強くなればなるほど、「不合格」だったときのショックは大きいでしょう。ひょっとしたら、6年間来る日も来る日も電車のなかで、「憧れ」だった学校の制服を着て、楽しそうにおしゃべりをしている姿をみながら、自分は他の学校に通うことになるかもしれません。悔しいでしょう。涙がこぼれそうになることもあるでしょう。でもその悔しさや涙こそが、実は志望校に合格した喜びよりもずっと大きな財産、受験勉強を通して君たちが手に入れる最高の宝物になるのです。

だから「塾の宿題があるから」とか「どうせ××中なんか受かるはずがないから」と決めつけないで、放課後の短い時間でもいいから、学校を見にいきましょう。志望校を決めましょう。そして「絶対にこの学校に合格するぞ」という強い気持ちをもって、この夏を迎えましょう。

読者の皆さん全員が、最高に充実した夏を過ごせることを、心から祈っています。