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気持ちいい感謝の言葉

夏期講習の終わりに、一度だけ教室で生徒たちを怒鳴りつけた。
教材を忘れた程度では叱らない。私自身子供の頃は忘れ物大王だったから。忘れたことを隠そうともせず、隣の子に「見せてくれる」と体を寄せた瞬間に、むしろその姿勢を褒める。
同じ問題を何度間違えても叱らない。少しイラっとした声になることはあっても、何度でも説明する。いくら叱ってもできるようになるわけではない。

私が激高したのは、清掃のおじさんが一人ひとりに「こんにちは」と声をかけてくれたのに、誰一人返事をしなかったからだ。「君たちがきれいな教室で勉強し、清潔なトイレを使うことができるのは誰のおかげだ?いい成績をとれば偉いのか?偏差値の高い学校に合格すれば偉いのか?それはすべて君たちを応援し、世話をしてくれるまわりの人たちのおかげじゃないのか?」
ひとしきり説教を垂れたあと、「今夜、家に帰ったら両親にこれまでのお礼と、『残り5ヵ月、本気で頑張るから応援よろしくお願いします』と頭を下げるように」と指示をした。
翌日、何人かの保護者からメールが届いた。
「昨夜息子が神妙な顔で『これまでありがとう。これからも応援してください』と頭を下げたので、ちょっと涙が出ました。ご指導ありがとうございます。最後に『先生に、こう言うように言われた』と余計なことを言いましたが」
本当にバカだよな~。余計なことを言わずにママを泣かせてあげればいいのに。だから国語力が伸びないんだよ……とあきれたが、その心境もよくわかる。照れくさいのだ。わかりきったことをわざわざ口にしないのは、たぶん日本人の国民性だ。

でも、言われた方はうれしい。だから私は、生徒がテストの答案を回収してきたら、その子の目を見て「ありがとう」と声をかける。
(ほら、気持ちいいだろ、感謝されるのって)……そんな無言のメッセージを込めながら。