ホーム > 塾長・後藤卓也のつぶやき > 偏差値が低くても逆転合格する子の作戦

ここから本文です。

偏差値が低くても逆転合格する子の作戦

年明け1月から始まる中学受験まで残すところ3か月足らず。志望校を決めるにあたって、子どもの偏差値が気になっている親も多いのでは。受験生の中には、偏差値が志望校の合格圏内に届かない子もいる。ところが、実際の受験では「絶望的」と思われた子が「逆転合格」する例も少なくない。なぜ、偏差値が伸び悩んでいたのに合格できる子がいるのか?多くの受験生を見てきた後藤卓也氏が逆転合格を果たす子どもたちの特徴と作戦を解説する。

逆転合格のミラクルは起きる?

子どもたちが模試を受けると、成績結果に「偏差値」という数字がついてきます。

試験の結果が、全体の中でどの位置にあるのかを示しています。中学受験では、算数、国語、理科、社会の4教科の合計点で「偏差値」に数値化しています。

試験を受けた子たちの平均が50、だいたい30~70の間に分類されるようになっています。また、それぞれの学校に「合格圏内」とされる「偏差値」が設定されています。

志望校の「偏差値」が52だとすると、それを超える偏差値なら「ほぼ合格確実」。偏差値が-5なら「ちょっと厳しい」、-10の場合は、残念ながら「お呼びでない」ということです。

この偏差値を目安に、家庭では「志望校選び」がなされているのではないでしょうか。

しかし、私の指導経験からすると、「偏差値」が10近く上の学校に合格する児童が、1学年180人程度のなかに、少なくとも10人はいます。

どうしてこんな「奇跡」が起きるのでしょうか?

実際にミラクルを起こした4人の子どもたちの例を見てみましょう。

【作戦1】学力のバランスの悪い子

A子さんとB子さんの「4教科総合偏差値」は2人とも45前後でした。

ただしA子さんは、各教科の偏差値が42~48に収まっています。一方、B子さんは算数が30台後半と伸び悩んでいましたが、得意の国語は57。理科と社会は40程度とばらつきが見られます。

受験で「ミラクル」を起こす可能性が高いのは、成績が「アンバランス」なB子さんタイプ。特に算数・国語のどちらかが強い子は期待できます。

中堅校の入試は、算数・国語が100点満点なのに対し、理科・社会は50点満点というケースが多くあります。理科・社会は、ほとんどが記号選択問題ですから、やはり算数・国語で点差が開きます。

最近は「得意分野で勝負する」ことのできる「新傾向入試」も増えてきました。

B子さんが志望する都内の私立C中学校は偏差値55前後で、普通に考えれば「お呼びでない」レベルです。

B子さんはすべり止めの併願校で合格を手にした上で、「記述力重視」型入試を導入したC中の3次試験にチャレンジ。得意分野の国語力を生かして点数を稼ぎ、見事合格しました。

模試は全分野満遍なく、難易度のバランスを勘案して作成されているので、「アンバランス」な子の偏差値は低くなります。

しかし、大切なのはその子の学力の特性(質)を見極めることです。

「どうせウチの子の偏差値は45だから……」とあきらめないで、その子の「持ち味」を生かした学習方法と入試作戦を考えましょう。

【作戦2】見違えるほど伸びる子

4教科の平均偏差値でその子の「学力」を決めつけるのも問題ですが、9~12月にかけて、月に1回実施される「4回の模試の平均偏差値」で合否を判断するのも、いかがなものかと思います。

「男子三日会わざれば刮目かつもくして見よ」という言葉もありますが、12歳というのはもっとも成長の度合いの著しい時期です。

12月の最後の模試が終わってから、東京・神奈川の入試まではまだ1か月以上あります。

たとえば9~12月の模試の偏差値が「47・46・44・44」のD君と「45・39・44・49」のE君。さて、どちらが「ミラクル予備軍」だと思いますか?

4回を平均したら、45.25のD君の方が44.25のE君より上ですが、「可能性が高い」のはE君です。

模試の偏差値が上昇したから学力が上がったと単純に捉えることはできませんが、少なくともE君は10月の「39」で「地獄」を見て(笑)、そこからはい上がってきたという自信を身につけています。

こういう子は最後の1か月で見違えるほど伸びる可能性があります。

【作戦3】偏差値が乱高下する子

難しいのは成績の「乱高下」が目立つ子です。こういう子は「気分屋」か、試験会場の雰囲気にのまれやすい神経質な子です。

合格に偏差値55は必要とされる進学校のF中学を第1志望にしていたG君。秋から年末にかけての4回の模試の偏差値は「50・45・53・43」でした。

両親は11月の「53」の可能性を信じるべきなのか、12月の「43」が実力なのか、悩んでいました。

苦手教科の国語は安定して40台前半ですが、ほかの3教科は45だったり58だったり、偏差値に“乱高下”が見られます。

試験問題が難しいF中学の合格最低点は低めになる傾向にあります。

中学受験は複数回受けられる学校もあります。そこで、2月に始まった入試の初日から、G君には3回続けてF中に挑戦させる作戦を立てました。初日の午後と途中にすべり止めの中学校も受験。F中学の結果は3回とも不合格となりましたが、倍率の高い最終日の3次試験で補欠で繰り上げ合格することができました。

学校発表のデータをみると、3次試験の国語の問題が難しすぎて、受験生の差がつかなかったことが幸いしました。複数回受験する受験生を「熱望組」として優先的に繰り上げ合格とする学校が多いこともあります。

模試ごとに偏差値が乱高下するG君は、会場の「雰囲気にのまれやすい」気質だったのかもしれません。毎日違う学校を受験するよりも、同じ学校を何回も受験したほうが力を発揮しやすかったのでしょう。

ただ、2回続けて不合格だった学校にまたチャレンジしに行くわけですから、塾と家庭が協力して、その子の心理的なケアをする必要があります。F中の3次試験の日、G君の一番慕っていた塾の教師が「早朝激励」に行ったことも、「ミラクル」の要因だったかもしれません。

【作戦4】ショック療法が必要な子

子どもの性格も大切な判断材料です。

H君はとにかく「勉強嫌い」で、忘れ物の常習犯でもありました。体は大きく、学校では「ボス格」。塾の授業はちゃんと聞きますが、両親が共働きで幼い弟と妹がいるせいもあり、家庭学習はほとんど野放し状態。模試の成績は平均して42です。

両親とも相談の上で、1月前半に偏差値50程度の埼玉の私立J中を3回続けて受験させることにしました。

ちゃんと過去問対策などをしていれば、受からない学校ではないのですが、ものの見事に3連敗を喫します。

「同じクラスの子はみんな合格しているのに、自分だけ3回も失敗した」。それまで親の言うことに耳を貸さなかったH君が、3連敗した夜、ママの布団にもぐり込んできて、「ボクだけどこにも合格できなかったらどうしよう」とシクシク泣きだしたそうです。

そこで急きょ(というか、実は予定通り)、1月下旬に偏差値40の千葉のK中を受験させ、そこで念願の「1勝」を獲得しました。わざわざ塾に来て、「先生、オレ、受かったよ!」と報告に来たH君の笑顔は忘れられません。

2月1日からは、第1志望のL中(偏差値53程度)を、やはり3回続けて受験させることにし、2回目の受験で見事合格しました。

これは12歳の子どもには、かなりキツい「ショック療法」です。「すぐに心が折れてしまいそうな子」の場合は、1月のうちに確実に合格させてから本命を迎えたほうが無難です。

受験は大きな成長のチャンス

残念なから、「作戦1」は「4教科均等配点」で「合格最低点」の高い学校には通用しません。

入試を1回しか実施しない学校には「作戦2」や「作戦3」もあまり効果的ではありません。「作戦4」については、入試直前の最後の手段です。

入試までまだ2か月以上あります。「覚醒の瞬間」を待つよりも、今からちゃんと勉強させた方がいいに決まっています。

ただ、「模試の成績」がすべてでないことは確かです。

少なくとも4教科の総合得点を「偏差値」に換算し、4回分のテストの「平均偏差値」を、その子の「学力」と決めつけて、「偏差値的に妥当な学校」しか受からないと決めつけるのは愚の骨頂です。

模試と入試問題では出題傾向も採点方法も違います。中学入試ほど学校ごとの出題傾向がそれぞれの学校で異なる試験はありません。

そしてなによりも、12歳の子どもは1回のテストの成否、周囲の励まし、ほんのちょっとしたきっかけで、大きく成長したり、逆に心が折れたりするものです。

偏差値が低くても……

模試のデータはあくまでも「過去の結果」であり、各校の「過去問」もやはり「過去の記録」に過ぎません。今どんなに成績が低迷していても、大切なのは「これからどう伸びるか」「どう成長するか」なのです。

志望校を選択するときも、「東大合格者数が何人か」とか「偏差値がいくつか」ではなく、「これから6年間で我が子を一番伸ばしてくれる学校はどこなのか」を考えることが大切です。

その子にとっての「第1志望」を選択することができれば、「模試の偏差値より10以上高い学校に受かった」という「ミラクル」はもちろんのこと、それ以上に、6年後(卒業時)に「この学校に入学して本当によかった」「先輩や友だちや人生の師に出会えた」「自分の人生を自分の足で歩いていける子に育った」という、もっともっと大きな「ミラクル」を手にすることができるはずです。

たとえ「偏差値」が低くても、「我が子にとって最高の中学受験」をさせるために、知恵を絞り、大人どうしで協力しあい、最後は勇気を振り絞って、「中学受験という試練」=「大きな成長のチャンスの場」に送り出してあげましょう。