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入試本番の緊張をほぐす「失敗力」

「不気味」なホラー映画…私の密かな趣味

先日、1年ぶりに映画館で映画を観てきました。タイトルは『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』。

 実は私、ホラー映画が大好きなのです。

 高校時代、生まれてはじめて女の子と観に行った映画が『キャリー』。貸ビデオ屋が流行り始めたころ、はじめて借りたのが(当時まだ日本では劇場未公開だった)『エルム街の悪夢』。その後、仕事と子育てが忙しくなり、しばらく足が遠のいていたのですが、再び映画館通いを始めたきっかけになったのが『呪怨』。

 ゾンビとか殺人鬼がでてくる映画には興味がなく、とにかく「不気味」な映画が好き。オススメはアジア製のホラーですね。いまはもうすっかり有名になってしまった『呪怨』ですが、何の予備知識もなく、古びた小さな映画館の最前席で観たときは、心臓が止まりそうになりました。

 他にも韓国映画『コックリさん』、香港映画『THE EYE』、タイ映画『心霊写真』など、あまり世間的な評価の高くない「B級ホラー」と呼ばれるものが、私のツボです。

いまだにうなされる「テストの悪夢」

 もともと怖い話が好きだったかというと、まったく逆です。子どもの頃はよく悪夢をみて、金縛りになって、どうやったら怖い夢をみないですむのか、真剣に悩んでいました。いまでもけっこう超怖い夢をみます。

 「ホラー系」の怖い夢もみますが、「テストの悪夢」もよくみます。終了時間が迫っているのに、全然、解答用紙が埋まっていない、あわてて答えを書こうとしたら鉛筆が全部折れている、あ~もう、どうしよう……みたいなところで汗びっしょりになって目が覚める。

 自慢じゃないけれど、私は「入学試験」で失敗したことは一度もありません。模擬試験の結果は悪くても、「本番」には強かったのです。それなのに、どうしていまだに「テストの悪夢」にうなされなければならないのでしょうか? 「夢は人間の隠された欲望のあらわれである」というのは精神分析学者フロイトの有名な理論ですが、私は「一度くらいテストで失敗してみたい」という歪んだ欲望をもっているのでしょうか?

 ホラー映画を観ていると、「絶対にそこを開けたらヤバい!」とわかっている扉を開けてしまうシーンがよく登場します。『残穢』の冒頭でも、同じようなシーンがありました。ヤバいものが出てくることがわかっているのに、どうして扉を開けてしまうのか。それはたぶん「開けなければ、話が先に進まないから」です(笑)。

ホラー映画の「扉」の前に立つような恐怖感…それでも先に進むためには

 中学入試が終わったあとで、受験生や保護者の方々から、試験直前の緊張感とか、合格発表を待つときの逃げ出したくなるような思いとか、いろんなエピソードを聞くことがあります。合格発表の場に向かう道でたまたま一緒になった教え子のお母さんが、「先生、私もうダメ。先に行ってください……」と腰から崩れ落ちそうになったこともありました。

 まあ、その気持ちはよ~くわかります。30年以上この仕事を続けていますが、私自身、いまだに「逃げ出したくなるような気持ち」から逃れることはできないからです。

 皆さんはまだ、それほどの緊張感を経験したこともなければ、想像することもできないかもしれません。でも、やっぱりテストの前日やテスト会場に向かう道中は、めちゃ緊張しませんか? 成績が返却されるときは、「あ~もう無理。できれば逃げ出したい……」みたいな気持ちになることはありませんか?

 でも「扉」を開かなければ、絶対に先には進めない。それはテストだけには限りません。これから先の人生においても、「そういうシーン」は何度も経験することになるのです。

模試や宿題で「小さな失敗」をたくさん繰り返す…「これで終わりじゃない」

 「家で宿題をやるときにはちゃんと解けるのに、テストになると全然できないんだけど、どうしたらいいでしょうか?」――つい先日、新6年生の女の子からこんな相談を受けました。

 たしかに私自身は「本番に強かった」のですが、「どうやったら本番に強くなれるのか」という秘訣があるわけではありません。だから、「まず自分のテストの答案を見直して、なぜ間違えたのかをノートにまとめて提出すること」という、ありきたりのアドバイスをするだけに留めました。

 私だって「緊張しなかった」わけではないのです。むしろ昔からものすごく「あがり症」で、テストはもちろんのこと、手を挙げて発言するだけで声がふるえ、足がすくみました(小学生のときには、それで「おもらし」をしたことも何度かあります)。

 いまでも保護者会の前には、「失敗したらどうしよう……」と、逃げ出したくなるのです。テレビカメラの前に立ったことも何度もありますが、毎回「もう二度とやりたくない」と思います。

 それでもなんとか大きな失敗をせずに、ここまでやってこられたのは……どうしてなのでしょうね(苦笑)。

 でも強いて言えば、「秘訣」らしきものが1つだけ頭に浮かびます。

 それは「小さな失敗」をたくさん繰り返すこと。「模擬試験の成績は悪かった」と書きましたが、それはウソではありません。何度失敗しても、それですべてが終わるわけではない。「ちゃんと勉強しないから、こういうことになるんだ」と、両親や先生から叱られたことは何度もあるけれど、でも「次は頑張れよ」と励ましてもらえる。

 結局、そうした経験の積み重ねがあるからこそ、「これで終わりじゃないんだ」と腹をくくって、困難に立ち向かうことができるのではないでしょうか。

「扉」の先にある未来…「失敗の積み重ねこそが力」

 いまはまだ塾のなかでの小テストやカリキュラムテストを受けているだけでしょうが、夏休み前後からは「合格判定模試」のような大規模な外部模試を受けることになるでしょう。小さなテストでも大きなテストでも、「失敗の積み重ねこそが力になる」と信じて、結果を恐れずに、扉を開ける経験を重ねていきましょう。

 そして最後の最後には「入学試験」という、重厚な扉が待ち構えています。でも、それだって「人生の最後の扉」ではありません。

 怖いけれど、緊張するけれど、逃げ出したくなるけれど、でも扉の前から逃げ出してはいけません。だって扉を開けなければ、君たちは前に進むことができないのですから。

 ドキドキしながら扉を開けると……ひょっとすると、そこには真っ青な顔をした小さな子どもが、膝をかかえて座っているかもしれません(『呪怨』の「俊雄くん」かな?)。その子どもは、不安と緊張感に囚われた、皆さん自身の「心」なのかもしれません。

 だとすればなおさら、勇気を奮い立たせて、扉を開けてみましょう。なぜならばその扉は間違いなく、弱い「心」を解き放ち、皆さんの未来へとつながっていく希望の扉なのですから。