ホーム > 塾長・後藤卓也のつぶやき > 胸に秘めたエースの誇り

ここから本文です。

胸に秘めたエースの誇り

小学4年生のA子の父親と個人面談をした。父親は少年サッカーのコーチで、今年受験を終えたB男もチームの一員だったという。
B男の受験指導を担当した私とサッカーの指導者だった父親はすっかり意気投合、A子の話もそっちのけでB男の思い出話に花を咲かせた。
B男は授業中に指名するとオドオドと下を向いて小さな声で答える気弱なタイプの子で、「何がなんでも第1志望に合格する」という覇気が感じられないのが歯がゆかった。
母親に「彼は気も優しいし、カッコいいし、サッカーもそこそこうまいそうだから、たぶん小学校でも人気者でしょう。
こういう『リア充』の子は『今の境遇から抜け出したい』という強い意志がないから、受験に弱いんですよ」と話したこともある。
ところがA子の父親によると、B男はサッカーチームではまるで違う顔を見せていた。
昨年の秋も深まったある日曜日、「午前中がテストで遅れました」と試合会場に現れたB男は、途中出場した後半だけでハットトリックを達成、チームを引き分けに導いた。
そして「これから授業だから」と颯爽(さっそう)と立ち去る後ろ姿を、チームメイトと応援団は尊敬と称賛のまなざしで見送ったという。
そういえば日曜特訓に遅刻したことがあったけど、あれが「その日」だったのか。
「『そこそこうまいそうだ』なんて、随分失礼なことを言っていたんですね」
「ピッチに立つB男はマジで神レベルでしたよ。彼が教室でオドオドしている姿なんて、逆に私には想像できません」
子供たちにも、いろんな生活の場があり、多様な顔、多くの長所や短所がある。
自分の印象だけで性格を決めつけてはならないと思い知らされた。
B男が見事第1志望に合格した背景には、エースストライカーとして胸のうちに秘めてきた責任感や誇りがあったのだろう。
中学サッカーの舞台で活躍するB男の雄姿を、いつか観に行きたいと思った。