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受験直前、子供たちの声に耳を傾けよう

本番2か月前に6年生アンケート、保護者会で公開

私たちの塾「啓明舎」では毎年12月の第1週、入試前最後の隔週テスト(2週間ごとに行っている塾のテストです)を、近くの私立校の教室を借りて実施します。そして、子供たちがテストを受けている間、講堂で「最終保護者会」を開催しています。

最終保護者会では、保護者の心構えはもとより、「残り2か月間の学習の進め方」から「受験当日の持ち物」に至るまで、みっちり2時間近く説明します。そして、最後に6年担当の講師一人一人から、自らの決意表明や保護者へのメッセージを伝えるのですが、数年前から、当日のプログラムに新しいコーナーを追加しました。

保護者会の1週間ほど前、6年生全員に本番2か月前の意識調査として「アンケート」を実施し、その回答のまとめをスライドで披露する「こどもたちのこえ」というコーナーです。今回のコラムでは、その中から、入試を目前に控えた子供たちの生の声を紹介していきます。

いま一番つらいこと「眠たい」「遊ぶ時間ない」「成績伸びない」

アンケートの最初の質問は「今一番『つらい』と思っていることは?」。その回答はほぼ三つに集約されます。まずは寝不足による眠気。「本当に眠い」「朝起こされてもまだ眠い」「眠すぎてつらい」……。やはりこれが一番多い回答です。中には「朝起こされる時に両脇を持たれて、無理やりリビングに連れて来られること」。なんだか光景が目に浮かぶようです。連れて行かれる方はもちろん、連れて行く方もきっとつらい思いをしているでしょう。

続いては「遊ぶ時間がない」「勉強のためにいろんなことを我慢すること」「テレビの電源を切られて見られないこと」……。その気持ちは痛いほど分かります。でも、それは仕方ないよね。

そして、「成績が滝のように落下している」「過去問をやって100点近く合格最低点に届かなかったこと」といった成績の伸び悩み。「合格可能性30パーセント」という模試の結果に「やった!3回に1回も受かるじゃん」とホザいていた連中も、12月になって真剣に過去問に取り組み始めて、さすがに「ヤバイ」と気付き始めます。そして、「入試に落ちた自分を想像すること」「どうしても楽な方に行こうとする自分」を「つらい」と感じるようになります。

両親へのお願い「干渉しないで」でも「応援して」

2番目の質問は「受験までの2か月、ご両親に『お願い』したいことは?」。その答えの一つは「お弁当」のお願いです。「毎日のお弁当に肉、お願いします」「お弁当にトマトを毎回入れて」……。私たちの塾では6年生になると週3日、9月からは日曜も含めて週4日がお弁当です。授業の合間のリラックスタイムでもあり、せめておいしいお弁当を食べたいですよね。「ごはんの上にふりかけをかけるのをやめて」「白米が熱すぎるので冷まして」「みそ汁が熱すぎる」といった、ちょっとフシギなお願いも毎年多く寄せられます。

両親へのお願いでは「怒らないで」も目立ちます。「起こす時に怒った声で言わないでほしい」「私の態度が悪いからだと思いますが、あまり怒らないでください」「お願いだからキレないでください。怖いです。呼吸困難になります。もうほんとムリです」……。ところが逆に、「お父さん、もっと厳しくしてください」「ダメな時に思い切りきつく叱ってほしい」という声も少なくありません。「怒らないで。でも厳しくして」というところでしょうか。

また、多くの子が訴えているのが「干渉しないで、静かにしておいて」というお願い。「勉強している時に話しかけないでほしい。集中力が切れて本当にイライラします」「勉強に対してつべこべ言わないでほしい」「静かにしていてほしい」「弟を黙らせてほしい」……。「叱られる」というより「干渉される」ことがイヤ。親として傍らで見ていると、イライラする気持ちも分かりますが、これも「受験生としての自覚の芽生え」と思って、できるだけ静かに見守ってあげましょう。

そして、一番多い両親へのお願いは「応援してほしい」です。「あきらめないで最後の最後まで応援をしてほしい」「ダメなのは私自身が分かっているので、言わないで」「夜一人で勉強するのはさみしいから、もう少し遅く寝てほしい」「最後まで背中を押してほしい」……。干渉はされたくないけど、応援してほしい。これこそが「親離れ」の成長段階を迎えている子供たちの、ほんとうの「心の声」なのだと思います。

「弁当ありがとう」「つらい気持ち理解」感謝メッセージも

次の質問「受験が終わったときに、お願いしたいことは?」の答えは、「××が食べたい」「××を買ってほしい」「××に行きたい」のオンパレードなので省略することにして、アンケートの最後の質問「受験までの60日、ご両親に一言」に対する回答を紹介します。

「残り短い時間、どんなに苦しくてもつらくても頑張ります。最後まで応援してください」「合格した学校の桜の木が並んでいる校門を両親と一緒にくぐりたい」「入試まであと2か月まで来て『やめろ』とか言わないでいただきたい」「受かったら金ちゃんと払ってね。落ちたら、慰めてね」「受かっても、落ちてしまっても、『頑張ったね』って言ってもらいたいです」……。

みんな受験に対する不安と闘いながら、でも、何よりも自分のことを両親に認めてほしいという気持ちが伝わってきます。「応援して!でも期待しすぎないで」というめちゃ正直な答えで、笑えました。

「今まで送り迎えをしてくれてありがとう」「お弁当を作ってくれてありがとう」「つらいということを分かってくれていることに感謝したい」「3年間、塾に通わせてくれてありがとう。これからもよろしく」という、たくさんの感謝のメッセージも寄せられています。

ここで紹介したのは「受験2か月前」の「こどもたちのこえ」ですが、その思いは受験1か月前でも10日前でも同じ。いやむしろ、もっと強くなっているはずです。叱られるのはイヤだけど、厳しくしてほしい。干渉されるのはイヤだけど、応援してほしい。そして、最後まで諦めないでほしい。どんな結果になっても、自分のことを認めてほしい……。

「だったら、あと1時間くらいは勉強しろよ」「漢字テストの直しくらい、ちゃんとやれよ」と言いたくなるでしょうし、私たち塾教師も実は、思わず口に出してしまいます。でも、それはちゃんと言うべきことです。合格するために何が必要かは、ちゃんと指示・助言しなければ子供たちには分からないし、彼らだって「このままじゃダメだ」と思っているのだから。

ただし、本人が「失敗した」と自覚していることを責めない。「何回言ったら分かるの!」と、過去を持ち出して叱らない。そして指示・助言は、冷静かつ具体的な言葉で伝える。「惜しい。あと10点取れば、合格ラインまであと一歩じゃん」と、子供たちの「今」と「明日の可能性」を認めてあげる。

「褒めれば伸びる」というのは「おだてれば木にも登る」と同じで、少なくとも受験生に関しては、子供たちの声に耳を傾けていないだけだと私は思います。子供たちを支える家族も我々も、大きな試練に立ち向かう「戦友」なのだから、ときには厳しいことも言う。その代わり、合格すれば自分のことのように喜ぶし、負けたらチーム全員の屈辱なのだから、思い切り悔し涙を流し、次の一歩を一緒に歩き出す。本気で「応援する」というのは、そういうことではないでしょうか。

私もこれから、6年生の教え子たちと保護者全員の「応援団」兼「戦友」として、受験まで残された日々を全力で走り続けていくつもりです。読者の皆さんの「チーム」にも心からのエールを送ります。